京都の六地蔵めぐり
- 2012/08/26
- 21:00
京都 六地蔵めぐり
京都に残る伝統行事の一つに、毎年8月22日と23日にめぐる「六地蔵めぐり」がある。 京都市内にある旧街道口六ケ所に安置された地蔵を安置する寺院をまわり各寺ごとに定められた色の「御旗」を 束ねて玄関先に吊るすと、家内安全、無病息災、家運繁栄といったご利益が得られるという800年以上続く京都の伝統行事である。 平安時代初期の歌人であり、また役人でもあった小野篁(おののたかむら)が、大病を患い仮死状態となって、地獄の世界へと行った時に、地獄に落とされて苦しめられている罪人たちを救う一人の地蔵菩薩に出会った。そしてその後蘇った小野篁は一本の桜の大木から六体の地蔵尊像を刻み今の大善寺あたりに伽藍を建立した。 その後、後白河法皇の命により保元二年(1156年)に六体のうち、最初に刻まれた一体を伏見街道の入り口に当たる大善寺に残し、 残りの五体を他の都街道の入口に六角堂を建てて分置した。これが現代まで広く庶民に親しまれている六地蔵めぐりの起源である。 毎年8月22日と23日の両日に行われるもので、京都市内の外側を一周する形をとる。各寺院の住所と地図は以下のとおり。
より大きな地図で 京都 六地蔵めぐり を表示 六地蔵めぐりは初めて巡ってみたのだが時間配分などが分からなかったために車で移動することにした。 簡単ではあるが目安時間も記しておく。 工程は上のリスト通りで、伏見の大善寺から時計回りに山科で終えるというルートを選んだ。名古屋方面に帰るのでこの方が効率が良い。 小野篁が六地蔵を刻み最初に安置したと伝わる大善寺は、地名や駅名が残っているように六地蔵の名で親しまれている。 ここが伏見街道の入り口にあたり、小野篁が最初に刻んだとされる地蔵菩薩が六角堂に安置されている。 到着が午前8時と早かったがこの日は2日目の23日ということもありすでに境内では寺の方と世話役の方が集まっていた。境内の奥に建つ六角堂へ向かうと普段は囲われている戸が外されており、この日のために綺麗に飾られた地蔵菩薩像が正面に安置されている。 化粧直しがされているが六角堂の地蔵菩薩は平安時代初期の作で重要文化財に指定されている。この像が小野篁が刻んだものかというのはあくまでも伝承なので分からないが、平安時代らしいの量感ある立ち姿みをしている。 化粧直しをされた仏像を拝した時に、今までの歴史が消えてしまったようで寂しく思えるものが多いが、地蔵菩薩像だけは特有の「お地蔵さん」という可愛らしい魅力を日本人には感じ取れてしまうから不思議だ。 ![]() |
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大善寺 六角堂 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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大善寺 地蔵菩薩 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
伏見の大善寺をあとにしてここから車で25分の浄善寺へ向かう。六地蔵めぐりの中では最も距離が長い。 浄善寺には午前9時に到着。京都市南区上鳥羽にある浄土宗の寺院で平成19年に京都市の指定文化財に指定された平安時代の十一面観音立像が安置されていることでも有名。 境内にある六角堂は大善寺と同じように戸が外されて比較的近くから拝見することが出来る。この六角堂の左手にあるのが新しく出来た観音堂で、この日は御旗を受け渡す場所となっていた。 ![]() |
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浄善寺 六角堂 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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浄善寺 地蔵菩薩 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
観音堂の十一面観音立像は通常事前予約が必要であるが、六地蔵めぐりの時にはこちらも戸が外され自由に拝観ができる。体の肉付きがよく大きな髻が印象的で等身大でありながらそれ以上に大きさを感じる。条帛は風になびき少し前傾姿勢で立つ。寺の創建を遡る10世紀頃の作とされており、どこからか移されてきたものなのかもしれない。 ![]() |
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浄善寺 十一面観音立像 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
浄善寺の拝観が終わったのが午前9時20分。この時間になってくると観光バスに乗った団体客が多くなる。次に向かうのが桂の地蔵寺。車で20分ほどの距離。境内に駐車場はないために近隣のコインパーキングを使うとよい。地蔵寺の前は一車線の八条通でかなり交通量が多く道も細いために歩いていると車にぶつかりそうになる。 地蔵寺に到着したのが午前10時。桂離宮の南西に位置する浄土宗の寺院で最近建て替えられたのだろう大きな本堂の中央に本尊の地蔵菩薩が安置されている。 ![]() |
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桂地蔵寺 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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桂地蔵寺 地蔵菩薩 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
地蔵寺の拝観を終えて次に向かうのは常盤の源光寺。太秦の北側なのでそれほど距離はなくここも車で20分ほどで到着する。 丸太町通の常盤駅前を南に入ると源光寺だがここも駐車場はないために南に入ってすぐのコインパーキングを利用する。 今回の六地蔵めぐりで多くをここに記す気はないが、その境内は荒れており、なにやら他の寺院とは違う新興宗教にも似た重たい雰囲気がある。六地蔵めぐりで頂く御旗も他の五つの寺とはデザインが異なり足並みが揃っていない事がわかる。時代の流れでどこかの時間はこういった事があるのかもしれないが本尊の地蔵菩薩は美しいだけに、この荒れた状態はとても残念に思えてならない。 ![]() |
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源光寺 六角堂 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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源光寺 地蔵菩薩 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
六地蔵めぐりも4ヵ寺を終えて時間は午前11時。残るは鞍馬口の上善寺と山科の徳林庵が残る。ここで全てを回れば昼の1時には六地蔵全てを回ることができるが時間があるので近くの広隆寺へ立ち寄った。 広隆寺は弥勒菩薩で有名だが、ここも地蔵盆のこの時期のみ地蔵堂が開扉され丈六の大きな白塗りのお地蔵さまを拝見することが出来る。 霊宝殿の諸仏を拝観し昼食を済ませ鞍馬口の上善寺に到着したのが午後1時。源光寺や広隆寺のある太秦辺りから車で20分の距離。 上善寺は大文字山を真正面から見ることの出来る加茂川の堤の西に位置する浄土宗の寺院で、六地蔵めぐりの中では一番大きな境内を持つ。地蔵堂には室町時代の作と思われる地蔵菩薩が安置され、その両脇には向かって左に聖観音像と右には化仏が取れてしまっているが十一面観音像だったと思われる観音像が安置されている。 昼になると観光バスで訪れる団体客が多くなり地蔵堂には多くの線香が焚かれていた。 ![]() |
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上善寺 地蔵堂 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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上善寺 地蔵菩薩 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
上善寺で1時間ほどゆっくりと過ごし、ここから車で20分の山科徳林庵へ向かう。 到着したのが午後2時半。山科駅から徳林庵へ向かう道は露天が多く出ていて車で入ることは出来ない。ここも近隣のコインパーキングに停めて向かった。 徳林庵は、比較的新しく南禅寺第260世雲英正怡(うんえいしょうい)禅師が1550年に開創した臨済宗の寺院。徳林庵という名前よりも山科廻地蔵(やましなめぐりじぞう)、山科地蔵、四ノ宮地蔵として地元の人々には親しまれている。 この時期のみ六角堂の奥にある建物に閻魔大王の若い頃とされる閻魔天の木造が安置されているので、そちらも併せて拝見することが出来る。 ![]() |
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徳林庵 六角堂 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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徳林庵 地蔵菩薩 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
これから巡る人にはおおよその目安としてもらえばいいが、車の場合だと各寺院までの移動時間はだいたい20分ほど。ひとつの寺院の参拝に15分~20分ほど掛けたのだが、上のリストの順で伏見の大善寺を朝8時に到着して、午後3時には終えることが出来た。 六地蔵めぐりの2日間は観光バスも出ていてこれだと午前9時頃に出発して午後5時過ぎに京都駅へ戻るというのが殆どらしい。公共の交通機関を使うなら桂地蔵寺もエリアに含まれる、京都観光一日乗車券(大人1200円)を使うのが便利。 そして六地蔵めぐりを全てめぐり終えると、それぞれの寺院でいただいた御旗が揃った。 ![]() |
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参拝日:2012/08/23 |
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