羽賀寺 御食国若狭を代表する十一面観音像【福井】
- 2012/06/08
- 20:00
福井 羽賀寺
日本海に面した福井県若狭地方は「奈良の入り口」と呼ばれるほど都との関係が深く、大陸から近く、海の玄関口として栄える巨大な貿易港であった。 若狭は、「御食国若狭(みけつくにわかさ)」とも呼ばれ、志摩や淡路などとともにウニやアワビ、鯛、イワシ、貽貝などを国へ納める「御食国」すなわち天皇の食料を貢ぐ国として朝廷にとって欠かせない土地であり、魚介類だけではなく海から採れる「塩」を通じて奈良や京都と交流があり、その影響で朝廷からの差配を受けていた。 そんな若狭の仏像を代表する観音像として有名なのが、今回訪れた羽賀寺の十一面観音。若狭の中心地でもある小浜市にあり、天ケ城山の麓、40軒ほどしかない羽賀という小さな集落にその寺はある。 ![]() |
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羽賀の集落。奥にそびえるのが天ケ城山 | |||
寺伝によると、霊亀二年(716年)鳳凰が飛来して羽毛を残すという吉祥に喜んだ元正天皇が行基に命じて創建した。朝廷の勅願寺として盛時には寺坊十八坊を数える大寺であったという。 度重なる火災や兵火により寺坊は消失してしまい、今では文安四年(1447年)に再建された本堂だけが緑深い山麓に残されている。 ![]() |
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羽賀寺参道 | |||
参道の正面には真新しい庫裏がありその参道を左に曲がると高く伸びた杉木立の参道に変わり、長い石段を登り終えると、そこには天ケ城山の深い緑に囲まれてひっそりと桧皮葺きの本堂が現れる。 ![]() |
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羽賀寺 | |||
その本堂内陣の中央にお厨子に入った姿で十一面観音が安置され、そのお姿は開山の元正天皇の御影と言われる。それくらいに、この像からは女性らしい気高さと比類なき美しさが感じられる。 ![]() |
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羽賀寺 | |||
似たような言い伝えに奈良の法華寺の十一面観音があるがこれは、光明皇后の御影とされる。その姿は皇后の力強さと威厳が全面に主張されているかのような迫力に富んでいるが、この羽賀寺の十一面観音はそれとは少し異なり、控えめながらもその色彩にどこか高貴な気品が伝わってくる。 檜材の一木造で平安時代10世紀頃の作。この時代の作でこれほどまでに色鮮やかな彩色像は少ないだろう。 長い間秘仏であったため当初の色彩がよく残っており、特に裳に残った朱が鮮やかに目に飛び込んでくる。 細めた目の下まぶたを深く彫り、水瓶を持つ左手から体にそって天衣が垂れ下がり、 左膝あたりから右膝にかけて流れる天衣は、すらりと下に伸びた長い右手に絡む。 この自然な流れの衣紋の意匠が、この像から受ける優美な雰囲気を醸し出している。 この寺が天皇の勅願を受けたという経緯から、都からそれ相当の工房と仏師によって彫られた本格的な十一面観音像に違いない。 他には、共に明治時代に廃寺となった松林寺に安置されていたとされる千手観音像と、両脚にひとりずつの邪気を踏んだ平安時代の毘沙門天像が安置されている。 拝観はいつでも可能なので、雪深い冬さえ避ければいつでもお会いすることが出来る。この若狭には他にも多くの素晴らしい仏像が安置された寺が多いので、じっくりと時間をかけて散策するといいだろう。 羽賀寺HP:http://www.hagaji.jp/ 所在地:福井県小浜市羽賀82-2 JR「小浜」駅からタクシーで約10分 拝観時間:9:00~16:00 拝観料:400円 その他詳細情報は仏像ワンダーランドHPへ>>
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参拝日:2011/12/01 |
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福井 羽賀寺
日本海に面した福井県若狭地方は「奈良の入り口」と呼ばれるほど都との関係が深く、大陸から近く、海の玄関口として栄える巨大な貿易港であった。
若狭は、...
- 2012/06/10(03:30)
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