田宮寺 伊勢を守る二躰の十一面観音【三重】
- 2012/02/23
- 22:00
三重 田宮寺
田宮寺は三重の松阪から伊勢へと向かう参宮線のほぼ中間に位置する。 車なら東名阪から伊勢自動車道に入り玉城インターを降りて10分の距離でそれほど苦労せず到着する。 田宮寺は標高の低い山々に囲まれた静かな土地にひっそりと佇み、今回は2月18日の初観音でご開帳される二躰の十一面観音に会いに行った。 ![]() |
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田宮寺 | |||
伊勢神宮へはここから15キロと近く、内宮長官であった荒木田氏の氏寺となっていた。 その後。織田信長の伊勢進攻により兵火にかかり隆盛を誇っていた本堂や客殿などは焼失してしまい、さらには廃仏毀釈により往時を偲ぶ面影は今はなく、現在では小さなお堂をふたつ残すのみである。 ![]() |
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田宮寺 観音堂 | |||
この日は朝から近所の人達で賑わい、普段の境内の世話も近所の何人かがされているようで、本堂で出会った老人は、随分前に若い人達に世話役を譲ったと懐かしそうに語ってくれた。今ではご開帳の二日間が楽しみで必ずお参りしていると話してくれた。 本堂では近所の人達が「参ってって、参ってって」と声を掛け合う地方ならではの光景が優しさに溢れていた。 ![]() |
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御船殿跡 | |||
田宮寺の道を挟んで向かいには神社があり、その境内には御船殿跡がある。 奈良時代から平安時代には、主な神社に神宮寺が建てられ、この近くの多気町にも神宮寺は建てられた。 田宮寺も神宮の法楽寺として、境内に内宮(皇大神宮)の遷宮の度に撤下された古御船代(ふるみふねしろ)を奉安する「御船殿」が建てられていた。今も残る御船殿跡は神宮とのつながりを物語る遺跡だ。 ![]() |
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田宮寺 十一面観音立像(正面向かって左) | |||
本堂に安置されている十一面観音は秘仏で2月18日と8月9日のみ一般に開扉される。 本堂の内陣奥に同じ背丈の十一面観音が安置されている。 正面向かって左の十一面観音は足元にわずかに彩色が残りふっくらとした顔つきの古様な作風で平安時代初期の作。 ![]() |
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田宮寺 十一面観音立像(正面向かって右) | |||
右は先の像と比べるとやや時代が下ると思われ平安時代中期。こちらは彩色が見えず綺麗な翻波式衣紋を表している。鼻は低くぺちゃんこで幼い少女のような表情をしている。 御船殿跡からも伊勢神宮との強い関わりが分かる。そうゆう繋がりからこの背丈も殆ど変わらない二躰の十一面観音像は、主祭神である天照大御神を祀る内宮、豊受大御神を祀る外宮を守護しようと祀られたのではないだろうか。 他にも収蔵庫の中には大きさはないが大日如来や迦楼羅像、厨子に収まったままの仏像がいくつか安置されている。その中で注目したいのが文殊菩薩像である。厨子に入っているため暗く全体像はよく把握できないが文殊菩薩の乗る獅子が立っているのではなく伏せた姿をしている。口を少し開け見上げた姿は他の獅子と変わらないが、伏せた状態で文殊菩薩を乗せているのは他に見たことがなく記憶に残っている。 田宮寺HP:ナシ 所在地:三重県度会郡玉城町田宮寺322 R「名古屋」駅からJR関西本線亀山行き「亀山」駅にてJR紀勢本線鳥羽行きに乗換、 「多気」駅にてJR参宮線鳥羽行きに乗換、「田丸」駅よりタクシーで約15分 公開:2月18日(初観音)、8月9日(夏祭り) ※他に20名以上の団体ならば特別開帳可能(要予約) 拝観料:志納 その他詳細情報は仏像ワンダーランドHPへ>>
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参拝日:2012/02/18 |
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