浄名寺 270cmの量感豊かな円空仏【愛知】
- 2012/02/15
- 13:00
愛知 浄名寺
愛知県の南西に位置する西尾市。 市の中心部から5キロほど離れた浄名寺に高さ270cmの巨大な円空仏が安置されている。 円空上人は江戸時代の遊行僧で、寛永九年(1632年)今の岐阜県に生まれ、 元禄八年(1695年)64歳で亡くなるまでに全国を巡錫して12万躰もの仏像を彫ったと伝えられている。 12万躰もの仏像をどのようにして彫ったかというのは謎が多すぎてわかってはいないが、 岐阜県郡上市の神明神社に安置された神像三躰が現在までに発見された最初期の仏像であり、 このとき円空は32歳。20代の頃から彫っていたと考えても40年ほどで12万躰というのは 途方も無い数字である。 しかし、円空の仏像には比較的大きな観音像を彫った際に出る木の端で 目鼻を付けただけの小さな仏像も彫っているのでこの数字も納得ができる。 愛知県の龍泉寺は千体仏として所蔵されているが、こうした仏像も12万躰に貢献しているのは間違いない。 ![]() |
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浄名寺 | |||
現在確認されている円空仏約5200躰のうち90%が愛知県と岐阜県に遺っている。 これは、円空が岐阜を中心に活動していたからなのだが、この浄名寺の円空仏はもともとこの寺にあったものではない。 寺伝によるとこの円空仏は明治二年に「伊勢国奥坂伝来」と記されており、 三重県伊勢市から移されていきたものである。 明治初めの廃仏毀釈が激しかった伊勢から船を使い多くの仏像が移されてきた。 三河湾には伊勢から近いこともあり多くの仏像が船で運ばれている。 奥坂という地名が伊勢市にはなくどこの地域の寺院に該当するかというのは分かっていない。地名の誤表記かもしくは人名なのか謎である。 ![]() |
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浄名寺 観音堂 | |||
浄名寺は尼寺で、住職は今年で85歳になられるそうだが大変元気で、その笑顔は円空仏の微笑と似ていた。 寺では観音菩薩像として祀っており、本堂の脇の観音堂で自由に拝観させてもらうことができる。 現在のお堂は平成十三年に建て替えられたものだが、その際は男10人で円空仏を移動させて 建て替えたのだという。小さなお堂で拝するその姿はまるで底に根付いているかのような重量感だった。 ![]() |
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浄名寺 円空仏「観音菩薩像」 | |||
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浄名寺 円空仏「観音菩薩像」 | |||
衣紋は素朴で、造形を簡略化させることにより木目や節といったその木の表情を引き出している。 仏像としての造形よりもその木に宿った見えない生命感などの「なにか」を重要視したように感じる姿で木の呼吸が聞こえるようだ。 表情は円空仏の特徴ともいえる慈愛に満ちた微笑をしており、その微笑は水害や疫病といった悪疫に苦しむ人々を守ってきたのだろう。 形態上で似ているのは志摩市の少林寺観音堂の善女龍王像で、 木端仏の出現というのはここから始まったものであろう。 円空は延宝2年(1674年)夏に伊勢志摩地方を訪れて多くの造像を行っており、 この観音菩薩像はこの時の作のようだ。 浄名寺へは最寄りの西尾駅から車で20分ほど。 この辺りは交通の便も悪いのが残念だが、機会があるならぜひとも拝して欲しい円空仏である。 浄名寺HP:ナシ 所在地:愛知県西尾市徳永町東側39 名鉄西尾蒲郡線「西尾」駅よりタクシーで約20分 拝観時間:要確認(特に決まってはいないが16時までが常識的な時間です。) 拝観料:志納 その他詳細情報は仏像ワンダーランドHPへ>>
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参拝日:2012/01/26 |
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