林光寺 真夜中に開く秘仏千手観音立像【三重】
- 2011/08/11
- 12:51
三重 林光寺・子安観音寺
8月9日、今年の夏は暑い。 夜になったというのに、この日は気温が下がらず 四日市の工業地帯を走る路肩の温度計は29度を指していた。 お寺さんといえば朝から夕方までが一般の拝観時間であるが、 この日は、三重県の鈴鹿市まで夜間拝観へと出かけた。 8月10日は「四万六千日詣り」といい、この日に観音さまにお参りをすると 四万六千日間お詣りしたのと同じご利益があるとされている観音様の縁日である。 この日の目的は9日22時30分から10日深夜1時までご開帳されている林光寺と、 10日0時から1時までご開帳される子安観音寺の2ヵ寺を訪れた。 ![]() |
||||
林光寺 山門 | ||||
四日市インターで高速を降り、国道23号線を走ると林光寺はある。 近鉄の鈴鹿駅の近くで、昔からこの地に人が住んでいただろう静かな住宅街の 中にポツンと提灯を2つ灯していた。 ![]() |
||||
林光寺 境内 | ||||
山門から見える奥の本堂は辺りの夜の静けさとは反対に明るく煌々と照らされており、 檀家信徒さんであろう町の人達がすでに20人近く集まり中では法要が行われていた。 ![]() |
||||
林光寺 本堂 | ||||
お堂の中では般若心経などがテープでながされており、 一つの大きな数珠を10人ほどの人たちで回していた。 まだご開帳される雰囲気ではなかったため、 寺務所でくつろぐ世話方の方にお話を聞くと、今では 22時30分からの法要となっているが、昔は10日の深夜1時から4時の3時間だけの ご開帳だったのだという。 しかし、時代が進むにつれて、近隣の迷惑になるということから 9日の22時30分から10日の深夜1時までのご開帳に変更されたのだとか。 ![]() |
||||
林光寺 本堂 | ||||
22時30分から始まった法要は1時間ほど続き、時計の針も23時を回ると、 決して大きいとは言えない本堂は、外に人が溢れるくらい集まっていた。 靴の数だけでも35人。この町の人達には大切な観音さまの縁日なのだろう。 昔から続く四万六千日詣りは、こうしたその町の人達で守られているものでもある。 ![]() |
||||
林光寺 CATVも取材に来ている | ||||
【林光寺について】 多くの人で賑わいを見せるこの林光寺は鈴鹿市神戸町にあり、寺伝によると天平12年に聖武天皇勅願所として 行基菩薩が開創された真言の古刹で、正平年間(1346年~1369年)より神戸城主代々の祈願寺となり 繁栄した。 林光寺はこのように戦国時代の城下町として栄えた神戸の町にある。 本堂は桃山様式となり、外陣の格子天井には花鳥の絵、内陣の壁画には明王や天部の 壁画が残されている。 その林光寺のご本尊が、この日にご開帳される秘仏千手観音立像である。 ![]() |
||||
林光寺 法要風景 | ||||
2人の僧侶が真言を唱えながら引き続き法要が続けられている23時30分頃、 大きな鐘の音と共に内陣中央の厨子の扉が開いた。 そして、法要が終わり僧侶の方の説法が終わると、希望の方一人ずつが、 観音さまの手に繋がれた五色の紐を両手に包み、僧侶が手にする密教法具の剣を 体に当てられ、厄除開運をお祈りした。 ![]() |
||||
林光寺 本尊千手観音立像 | ||||
![]() |
||||
林光寺 本尊千手観音立像 | ||||
その後、本尊千手観音を外陣から拝見するも暗く斗帳はかかったままなので 厨子中の様子がよく分からない。 年に一度のご開帳のため、拝観目的の環境ではないので仕方ないが、目視では 目が慣れてもその姿を拝見することは不可能だった。 すると、この日のご開帳を取材に来ていた地元のCATVの方が撮影用にスポットライトを ご本尊の厨子に向かって当ててくれた。 すると姿が浮かび上がり、その厨子が京都の永観堂見返り阿弥陀さまの安置される厨子のように 金網が張られていることがわかった。目視でしっかりと姿が見えなかったのもこの為かもしれない。 写真に収めさせていただく事はできたが、それでも分かりづらいであろうから、 全体の像容は境内外の看板を一緒に載せることにする。 ![]() |
||||
林光寺 本尊千手観音立像(境内の看板を撮影) | ||||
本尊千手観音は平安時代藤原期の作で、国の重文指定。座高が108.1cm(光背まで入れると127cm)の桧の一木造。 全ての脇手には持物を持つ。 年に一度のご開帳ということもあり、保存状態は非常に良く、光背など後補の箇所はあるがそれは残念ということはなく(美術的に見る方は別だが)しっかりと修理も行き届き綺麗な姿を私たちの前に表してくれた。 その素朴ながらも丸い顔は護摩焚きのススで黒ずむこともなく離れた外陣からも木肌が美しく感じられた。 ![]() |
||||
子安観音寺 | ||||
じっくりと観音さまを拝見させていただくと時計は10日0時を過ぎていた。 この林光寺から伊勢湾に向かい車で15分ほどの所にある白子の子安観音も 「四万六千日詣り」をされており、本尊の白衣観音さまは、 10日深夜0時から1時までがご開帳である。急いで車を走らせた。 ![]() |
||||
子安観音寺 本堂 | ||||
境内に到着すると、こちらも沢山の人が集まっていた。 この深夜の時間帯にご開帳される寺院は鈴鹿市内では、この2ヵ寺であるが もしかすると、この地域には昔からもっと多くの寺院で四万六千日詣りがされていたのかもしれない。 ![]() |
||||
子安観音寺 | ||||
子安観音寺も林光寺と同じく真言の古寺で、本尊には白衣観音をおまつりし、 「白子の子安観音」の呼び名で親しまれる安産や子授けの信仰が篤いお寺である。 昭和の時代に新しくされたお堂には沢山の人が列をつくり、外陣でお寺の方から 塗香を頂き、体を清めてから3人1組で内陣奥の厨子に向かう。 そこで二人の僧侶と一緒に白衣観音のご真言 「オン シベイテイ シベイテイ ハンダラ バシニソワカ」と7回唱え拝見する。 こちらも林光寺と同じく厨子の中は暗く目視では像容を把握することは出来なかったが、 手前に御前立、その一段上がった奥に本尊白衣観音像が安置されている。 ![]() |
||||
子安観音寺 境内 | ||||
深夜1時を手前にして、8月10日年に一度だけの観音さまの縁日が一旦終わった。 しかし8月10日は始まったばかり。 一旦帰路につき、朝には岐阜へと向かうことにする。 林光寺HP:ナシ 所在地:三重県鈴鹿市神戸6丁目7-11 近鉄「鈴鹿」駅下車徒歩10分 拝観時間:ご開帳時は8月9日午後10時30分~8月10日午前1時まで 拝観料:志納 その他詳細情報は仏像ワンダーランドHPへ>>
大きな地図で見る 子安観音寺HP:ナシ 所在地:三重県鈴鹿市寺家町3-2-12 近鉄名古屋線「鼓ヶ浦」駅下車 徒歩3分 拝観時間:ご開帳時は8月10日午前0時から午前1時まで 拝観料:志納
大きな地図で見る |
||||
参拝日:2011/08/09~10 |
スポンサーサイト