成願寺 近代的お堂に安置された名古屋市最古の十一面観音さま【愛知】
- 2011/04/13
- 13:09
成願寺
桜が満開となった4月上旬。 名古屋市で最も古いとされる観音様を拝見しに名古屋市北区の成願寺さんを訪れた。 最後に掲載した地図で見てもらうと分かりやすいが、現在の成願寺は矢田川の南堤にあるが、もともとはその北に流れる庄内川の間に位置するお寺で、昭和8年に矢田川の改修に伴いこの地に移されたという。 創建は古く寺伝では天平17年(745年)といわれ、この地方の豪族である安食・山田両氏の菩提寺であった。 ![]() | |||
成願寺 | |||
2009年に全面改築をされ、今はまるでコンサートホールのようなガラス張りの本堂となっている。 事前に拝観の予約をさせていただいたので、これまたモダンな直線的デザインの事務所へ行きご住職に挨拶を済ますと本堂へと案内してくれた。 一年ほど前にも観音様を拝見させていただいたのだが、その時はあいにくご住職は外出されていたようで、奥さんであろうか、お寺の方に開扉していただいた。 ![]() | |||
成願寺 本堂 | |||
現在ではバリアフリーとなっており、本堂には床暖房を入れご本尊の安置されているお厨子の前には80脚ほどの小椅子が並ぶ。 これもやはり高齢化している檀家さんへの配慮ということで、昔の面影をすべて変えてしまうこの作りにはご住職自身も相当悩んだのだという。しかし、中興の祖であるこの地の豪族山田重忠による中興開山800年(平成21年)を記念し、現在の形へと変えたそうだ。 確かにお寺のあり方としては日本人が敏感に感じ、海外からの訪問者が憧れる侘び寂という情緒はないが、観光寺院ではなく、このような街中の檀家信徒さんを第一に考える寺院としては、この姿が正しいのかも知れないと思う。 変わらない姿ではなく、変えていくことも大事ではないだろうか。 そんなご住職のお話の後、これまたお堂の姿と同じく直線的なデザインで木の風合いを出した真新しい お厨子の扉を開けて頂いた。 ![]() | |||
成願寺 十一面観音 | |||
成願寺の十一面観音さまは平安時代初期の仏像で、名古屋市の有形文化財に指定されている。 この地にこれ程までに古い仏像が安置されているのは、中世ではこの地が安食荘と呼ぶ荘園に属しており10世紀には京都の醍醐寺の荘園となったといわれ、その関係から都(京都)との交流があったのではないだろうか。 十一面観音さまは高さ164cmと等身大の高さで一木造。 正面の顔と同じく化仏には丸みがあり、宝冠や瓔珞は外されているが今でも大事に保管されているのだという。 裾の部分には翻波式衣文がみられる。 ![]() | |||
成願寺 翻波式衣文 | |||
※翻波式衣文(ほんぱしきえもん):奈良時代末期~平安初期の彫法、波に似た小波(尖った線)と大波(丸い線)が 交互に表出した技法。 ![]() | |||
成願寺 十一面観音 | |||
まっすぐこちらを向くその瞳は山号の名のとおり慈眼(じげん)の相をし、化仏や水瓶、台座などは後補であるが、衣紋や裳の所には花紋が描かれ彩色像であったことが分かる。光背は後補のものであろう、天台宗寺院によくある緑の円光背である。 庄内川と矢田川の間、輪中のような場所に位置し、度々の水害にもあいながらも観音さまはそっと優しく透き通った慈悲の目を私たちに向けている。 今のように堤防工事などの技術が乏しい当時は、多くの方がこの地でこの瞳と向き合い心を落ち着かせたに違いない。 慈悲の心と一言で言っても伝わるものではないが、この観音様の表情は慈悲の心を分かりやすく体現化している。 中興開山800年による大改築。お寺では今後、新たな試みを進めていくそうでその未来を楽しそうにお話しするご住職は観音さまと同じでとても優しい笑顔をしていた。 成願寺HP:ナシ 所在地:名古屋市北区成願寺2-3-28 電車:地下鉄名城線「黒川」駅下車、徒歩約30分 拝観時間・休み:拝観の際は電話にて予約することが望ましい(052-981-4530) 拝観料:志納 その他詳細情報は仏像ワンダーランドHPへ>>
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参拝日:2011/04/09 |
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